ザメンホフの生涯 (1)

著者のまえがき

 ここにあるのは、エスペラントのことば[・・・]の歴史ではなく、またエスペラントの運動の物語でもない。
 目的は、ルドビーコ・ザメンホフの生涯と思想のスケッチであった。気をつかったのは、それが一、二の人の気に入るだろうかというのではない。ただ、じゅうぶん忠実に、また愛情をこめて、正しい真実をたどるかどうかであった。
 最も偉大な精神、最も純粋な天才が形づくられるのは、環境に負うところが多い。ゆえに、系統と生まれた土地から始めるのが必要であった。インスピレーションによって、常に生き生きとしている故人の思い出に、われわれが負うているもの、みんなはそれを光として、心のなかに、たいせつに保存している。
一九二〇年七月、ジュネーブにて、
E・P